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Doctor's Eye

日本のワクチン接種に思うこと(2021.2.15)

2020/10/22の産経新聞では『勧奨中止で死亡4000人増加』という記事が掲載されています。
内容は

『子宮頸がん予防ワクチン子宮頸(けい)がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの積極的な接種勧奨を厚生労働省が中止し接種率が激減したことで、無料で受けられる定期接種の対象を過ぎた2000~03年度生まれの女性では、避けられたはずの患者が計1万7千人、死者が計4千人発生するとの予測を、大阪大チームが22日までにまとめた。 接種率が0%近い現状のままでは、その後も同じ年に生まれた女性の中で4千人以上の患者、千人以上の死者の発生が防げなくなるとした。』

との事です。

子宮頸癌ワクチンは2010年に公費助成が始まり、2013年4月に小学6年~高校1年への定期接種となったのですが副作用の懸念から6月、接種は無料のまま勧奨が中止されました。

日本の予防接種はインフルエンザ予防接種を学校で2回施行されており世界の中でも非常に優秀であった反面、針の使い回し問題や予算問題から個別接種になり、新型インフルエンザ予防接種を契機にいつの間にか通年性インフルエンザ予防接種が1回になりました。また麻疹・風疹ワクチン接種が1回(風疹は女性のみ中学2年時施行の時もあり)であり2回打ちの諸外国から麻疹ウイルス輸出国と揶揄されました。

日本脳炎予防接種に関しても副反応が問題となり中止時期が長く、その後の接種に間に合わず公費で出来なかった人もおり未だにその弊害が残っています。

日本のワクチン接種は信頼できる文献の良いものを取入れたり、悪しき慣習をすぐに変更出来ない反面、世論の確証のない噂の渦にすぐ影響されてしまいます。

でもこのコロナ禍、その対応の悪い日本が先進国の中で遅まきながらでも動いたのです。それだけ緊急性があるという事です…でもそのワクチン接種を希望してない人も多いようです。

ワクチン接種には副反応はほんの少数ですが出るものなのです(天然痘ワクチンの開発者;エドワード・ジェンナーの時代からです)。インフルエンザワクチン接種では約2283万回接種して、2428件の副反応あり、うち重篤例は416件で、死亡は133件。かといってワクチン接種せず罹患することによる死亡は一年で3000人(超過死亡概念;1万人)…確率の問題です。これをどう考えるかは個人の自由です。それを踏まえ他の色々なワクチン接種も成り立っています。COVID-19 Vaccineも同じです。ワクチン施行時の危険率・感染の死亡確率を各人が冷静に考慮するのです。

日本人はやはり世界的に見て病気や医療に対する安全神話が強く、打った時のメリットよりやらない時のデメリットに目がいかない傾向があります。(副反応のきちんとした確証のない)接種後の少数例の衝撃的映像・ニュースを取り上げるマスコミやSNSを鵜呑みにする風潮が強いようです(それが良い国民性でもあるのですが…)。国も国民のそれに乗っかり右往左往(国民から少し非難が出るとすぐに全体を中止して十分な検証なく再開する)してしまうためワクチン後進国といわれているのでしょう。

しかし今回のCOVID-19は少し様相が違います。現在パンデミックになっており、この状況を打破するには人類の80%が感染して免疫を獲得するか、ワクチンによる抗体を獲得するかという選択です。現状ワクチン開発はこのコロナ禍で多少煩雑になっているかもしれませんが化学も進歩しています。

接種は強制ではなく自己選択です。副反応はインフルエンザワクチンより多少多いようですが、効果はインフルエンザ40~60%、COVID-19;90~95%で多くの海外医師も接種しており、私もする予定です。

この決断はいずれ来る新型インフルエンザやその他の未知のウイルス出現でもまた迫られます。この経験はそのための試金石としても大切なことだと思います。